日常会話のゆがみ
2026/07/17
いよいよ五月に向かい、心理カウンセラーが忙しい季節でもあります。
あなたの知り合いが悩んでいる時には、あなたは「何か力になりたい」と考えます。でも、その優しい気持ちが、悩んでいる人の心を閉ざし、孤立させているとしたら。

日常の会話の中で、こんな対話を「良かれと思って」やっていませんか?
1. 「不登校の子を持つ親」に対して
「今のうちに勉強させておかないと、将来苦労するよ」
「フリースクールとか、他に居場所を探してあげたら?」
親の本音:「そんなこと、もう百も承知。それができないから苦しいのに……」
◎プロは「毎日、学校に行けない我が子をそばで見守り続けるのは、親として本当に身を切られるような思いでしたね」「正解が見えない中で、あなたは今日まで、お子さんの味方でいようと必死に踏ん張ってこられたんですね」
プロは「学校に戻す方法」を提示する前に、親が抱える「孤独な戦い」を労います。親の心が満たされて初めて、子供への接し方に余裕が生まれるのです。
2. 「介護に疲れ果てた人」に対して「もう施設に預けたら? 共倒れになっちゃうよ」
「社会福祉に頼って、もっと手を抜きなよ」
介護する人の本音:「施設に入れる罪悪感を分かってくれない。手を抜けるならもうやってる!」
◎僕たちプロはここで「『自分の手で最後まで』という深い愛情があるからこそ、これほどまでに、ご自分を追い詰めてこられたんですね」
「お父様との大切な思い出があるから、簡単に割り切ることができず、お一人で抱え込んでこられたのでしょう」
解決策としての「施設」を提案する前に、本人が守ろうとしている「家族の絆」や「愛情」の重さに光を当てます。
3. 「仕事でミスをして落ち込む部下」に対して「次から気をつけろよ。俺も昔はもっとひどい失敗をしたけど、こうやって乗り越えたんだぞ」
相手(部下)の本音:「(上司の武勇伝を聞かされて)結局、僕は無能だと言いたいんだな……」
◎僕たちプロはここで「期待に応えたい、会社に貢献したいという思いが強かった分、今の悔しさがあるのでしょうね」「そのミスを重く受け止めていること自体、君の責任感の表れとも言えそうですね」ミスの修正を急ぐ前に、本人が持っている「貢献意欲」にフォーカスしましょう。人は「分かってもらえた」と感じた時、自ら改善策を考え始めます。
「正す」のではなく、相手を信じる力が「共感力」です。「頑張れ」という言葉は、裏を返せば「今のあなたは頑張りが足りない」という否定になってしまいます。

プロは、相手を「正そう」とせず、その人が置かれている「暗闇」の部屋に一緒に座ります。その安心感の中で、悩んでいる人は本当の思いを口にするのです。
今日、あなたの周りで誰かが悩みを打ち明けてきたら、アドバイスを1回だけ飲み込んで、代わりに「それだけ真剣に向き合ってきたんだね」と、その背後にある「想い」を言葉にしてあげてみてください。

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心理カウンセラー衛藤信之
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