埋まらないズレ

      2026/07/17

 相手の立場になる。
 言うのは簡単ですが、実際にはとても難しいことです。



 あるカップルが結婚することになりました。
 「できるだけ手作りの温かい結婚式にした。」
 そんな二人の願いを聞いて、友人たちが式の進行や催し物を一緒に考えてくれることになりました。
 ところが、ある日の打ち合わせに、一人の友人が少し遅れてきました。
 その時、新郎になる男性が遅れた友に言いました。
 「一生に一度の結婚式の打ち合わせに遅れるなんて、真剣味がない証拠だよ。俺たちにとっては、一生に一度なんだぞ💢」
 その一言がきっかけで、友情は壊れてしまいました。

 もちろん、新郎新婦にとっては一生に一度の大切な結婚式です。
 でも、手伝う友人からすれば、仕事の予定を調整しながら「自分にできる範囲で力になろう」という感覚だったのかもしれません。
 ここには、お互いのスタンスの違いがあります。

 これは、仲の良い友人同士で一緒に仕事を始めた時にも、よく起こります。一人は貯金をはたき「これで人生を変える」と再起をかけている。
 もう一人は「副収入になればいいかな」というサイドビジネスの感覚で関わっている。それでも共同出資で事業を始めると、

 「本気でやる気あるの?」
 「なんでそんな言い方をするんだよ?」
 と、少しずつズレが大きくなり、最後は空中分解してしまうことがあります。

 こんなこともありました。
 ある女性が友人の香水を褒めました。
 「素敵なフレグランスね」
 すると後日「デパートで買ってきたのよ。2万円したのだから」と領収書を渡され2万円を請求されたそうです。

 褒めた女性は何気なく「私もそんな香りが好きだな」言っただけだったから「そんなに高いなら、買う前に『本当に必要?』って聞いてほしかった」と伝えました。

 一方、良かれと思って買った側は「せっかく時間をかけて買いに行ったのに、迷惑だったの?信じられない💢」と互いに気まずくなりました。

 ここでも、お互いに悪気はありません。ただ、立っている場所が違うだけなのです。一所懸命な時ほど、親切にしようとしている時ほど、人は「自分は正しい」と思いやすくなります。すると、不思議なことに、相手の立場になることを忘れてしまうのです。

 僕はいつも言っています。
 「正しい」という漢字は「一」と「止」が重なってできています。
 だからこそ「自分が正しい」と思った時こそ、一旦立ち止まることが大切なのです。

 今の時代、インターネットのアルゴリズムは、自分が見たい情報、自分が信じたい情報ばかりを次々と届けてきます。その結果、自分の考えはどんどん強化され「自分だけが正しい」と思いやすくなります。
 だから戦争も、誹謗中傷も、ヘイトも、自分は間違っていないが強くなります。


 人はどうしても自分を基準に世界を見ると言われています。

 自分が一生懸命なら、相手も同じくらい一生懸命だと思ってしまう。
 自分が大切なら、相手も同じくらい大切だと思ってしまう。
 でも、人にはそれぞれ違う人生があります。

 違う仕事があります。
 違う家庭があります。
 違う価値観があります。

 だから「どうして分かってくれないの?」ではなく「もしかすると、この人には私とは違う景色が見えているのかもしれない」そう考えることが、人間関係ではとても大切なのです。
 だからこそ、自分が正しいと思った時ほど、少し立ち止まり、相手の立場を想像してみる。そして、穏やかな言葉と穏やかな態度を選びたいものですね。

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心理カウンセラー衛藤信之
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