繰り返されるゲーム
2026/07/17
「人は変わりたい」と願っても、一度できあがった「自己イメージ」を、何度も確認するために生きているように思うことがあります。
例えば「私は価値がない」という人生脚本を幼い頃に描いてしまうと、不思議なことに、自分を傷つけるモラハラやDVの相手に惹かれてしまったり「私は大事なところで失敗する」と信じている人は、ビジネスでも肝心な場面で誤った判断をしてしまうことがあります。

それほど、人は意識よりも無意識の巨大な力に引っ張られてしまうのです。
「変わりたい」と願いながらも、心の奥底では「変わる恐怖」から全力でブレーキを踏み続けてしまう。そんな心のドラマを下に紹介します。
患者B:「先生、どうしても夜眠れなくて、お昼もずっと体が重くてしんどいんです。どうにかこの状態から抜け出したいんです。」
精神科医A:「それは本当にお辛いですね。睡眠のデータを見ると少しリズムが乱れているようですから、まずは朝起きたら少しだけベランダに出て、太陽の光を浴びてみるのはどうですか?」
患者B:「はい、でも、 うちのマンションのベランダ、日当たりがすごく悪くて影になっているので、光なんて入らないです……」
精神科医A:「それなら、例えば軽いお散歩をかねて、近くのコンビニまで歩いてみるのはいかがでしょう?」
患者B:「はい、でも、 お昼は近所の人たちの目がどうしても気になって、外に出るのが怖くて……」
精神科医A:「なるほど、周囲の目がね。では、お薬を調整して、夜にぐっすり深く眠れるようにしましょうか」
患者B:「はい、でも、 以前別の薬を飲んだときに、日中まで頭がボーッとしてしまって……私、薬の副作用が出やすい体質みたいなんです……」
精神科医A:「それなら、お気に入りの音楽を聴くとか、ハーブティーを飲むなどして、リラックスできる時間を少し作ってみるのはどうですか?」
患者B:「はい、でも、 音楽を聴いていても不安なことばかり頭に浮かんできて、お茶を飲むくらいじゃ私のこの根深いストレスは何も変わらない気がするんですよ……」
精神科医A:「(困り果てて)うーん、困りましたね」
患者B(表):「(どこか満足そうに、ホッとした表情で)やっぱり、私のこの体調は、現代の医学でもそう簡単には解決できない特別なものなんですよね……。先生を困らせてしまって、すみません」
これは「はい、でもねゲーム」と呼んでいます。どんなアドバイスも無意識に実行不可能にして却下してしまうのです。そのゲームに精神科医も引っ張り込まれています。
「ほら、やっぱり先生でも無理だった。僕の思った通りだ」
無意識は、自分が昔から信じてきた自己イメージが正しかったことを確認できて安心しているのです。
このようなやり取りを交流分析では「心理ゲーム」と呼びます。そして、このゲームを繰り返して最後に得られるものを「心理的利益(ペイオフ)」です。
表面では「治りたい」「変わりたい」と願っていても、無意識では「やっぱり私は変われない」「やっぱり誰も助けてくれない」という人生脚本を証明するのです。

人は現実を生きているのではなく、自分が信じている自己イメージを証明するような現実を生きてしまうことがあります。
だから心理学は、行動を変える前に、その自己イメージを知り、書き換えることが大切なのです。本日の交流分析②のプロコースは、そんな無意識に隠された、人それぞれの脚本を見つめます。

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心理カウンセラー衛藤信之
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