寄り添う安心感
2026/07/17
病んでいる時の心には、陽の光、広い世界、車の騒音、誰かが話す笑い声、信号の音などが、心のキャパシティを超えて、圧倒してしまいます。
アドバイスで『昔、楽しかったことを思い出してやってごらん』って言われても、やって、何も感じなくなっている今の自分を知るのが怖いのです。

『若いから無限の可能性があるよ』の言葉に、その可能性の多さにめまいを起こします。
ネットで『何も考えないで休む時間を』の指示も、何も考えない時間こそ、過去に誰かに言われた辛い言葉や未来の不安だけを思い出して苦しくなる。
「朝が来ない夜はない」に、また朝が来てしまう不安をただ感じます。
心が元気な時には、不必要な情報を遮断するフィルターがオートで働きます。でも、心が病む時は、手動のフィルターに多くの情報が大量に流入します。
日々、24時間365キロの重いバーベルを抱え生きているからです。その時に『リラックスして』『好きなことやってごらん』『眠ることが1番だよ』というアドバイスは、100個以上のアプリが入った電池切れのスマホに、さらに新しいアプリ(命令)を追加することになるのです。
インディアンのように生きている時代は「今日の水と食糧をどう確保するか」「敵から家族をどう守るか」で手一杯でした。
脳の全リソースは五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)を通じて「外の世界」が中心です。そこに、過去の後悔や未来を考える隙間など、一ミリもありませんでした。
でも現代は、蛇口をひねれば水が出、スイッチ一つで部屋が涼しくなり、コンビニに行けば食べ物が豊富に手に入るのです。「ただ生きるだけのエネルギーの消費」は、ほぼゼロです。その結果、莫大な脳の活動が「過去の記憶の反省」や「未来のシミュレーション」のために使われます。

では、心を救う最大の特効薬は何か?
それは「頭」ではなく「五感」を刺激することです。頭の中で鳴り響く思考のボリュームを下げるためには、圧倒的なリアリティの感覚の世界だけに意識を向けることです。
僕はインディアンの知恵を生かし、過去のアイランドツアーでは、悩む若者を大自然の中に連れ出して、風の音や大地の温もりを感じてもらいました。
五感を刺激し、思考中心から主導権を奪うのです。
《触覚》 視覚を遮断し、手だけの感覚でパートナーを探したり、カヌーで波を感じます。
《環境》 部屋の電気を消して、波の音や月を感じ、焚き火の揺らぎに意識を向ける。
五感の刺激で、脳を「手一杯」にするのです。日常の生活なら、一緒に外へ出て「鳥たちの声を聞き分ける」「道端の花を3種類見つける」といった、意識を五感に向けるだけにします。すると思考の反省時間がオフになります。
悩む人は、選択肢の多さに圧殺されているのです。そのため、心の回復の初期段階では「何が食べたい?」「どこへ行きたい?」という質問も僕は避けます。
「今日は温かいスープを飲もう」「今日は海に行こう」と、安全なレールを1本だけ敷いて(選ばせない)それが優しさなのです。
そして、朝起きられた、顔が洗えた、という日常の行動に対して「普通の人なら当たり前」という引き算ではなく、24時間365キロのバーベルを持ち、日々を生きてくれている君が「顔を洗えた!これはものすごい偉業だ」と、すべての加点方式で対応します。常識や理屈のアドバイスでは誰も救えません。
理解者が、寄り添う安心感が、もう一度生きる力を取り戻すことにつながります。

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心理カウンセラー衛藤信之
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